「手術後、生まれて初めて生理痛のない生理がきて、うれし泣きしました」
レポートNo.6

H.R.(24歳)
●生理は痛いものと思っていた
生理は痛いものだとずっと思ってきました。中学の時から生理になると腰のあたり がずっしりと重苦しい感じがあったし、高校生になってからは、それに下腹痛が加わりました。学校はなんとか休まずに行っていたけれど、痛くて保健室で寝ていたこともよくありました。母から「鎮痛剤は身体に悪いから使わない方がいい」と言われていたので、いつも「早く終わってほしい」と我慢していました。高校卒業後アメリカの短大に入学してから、痛みはさらにひどくなって、もう痛み 止めなしには過ごせなくなりました。短大からそのまま同じ都市にある大学に編入し会計学を専攻していたのですが、授業がびっしりで生理痛があっても休めませんでした。

それで、生理になるとイブプロフェンという鎮痛剤を飲むようになりました。これは日本で市販されている鎮痛剤の2倍もの鎮痛効果をもつ強い薬ですが、はじめは1日1錠でしのげていたものが、だんだん効かなくなって、朝と夜の2錠飲まずにはいられなくなりました。それでも痛みを抑えきれなくなって、「いったい、どこまでひどくなるんだろう」ととても不安でした。


●体力、気力がなえてい
アメリカのカイロプラクティクスの治療院で、痛みを緩和するためにハリ治療や、蓬(よもぎ)の葉っぱを蒸してお腹の上に乗せるという漢方療法を受けたりしました。たしかに治療を受けた直後は少しラクになるのですが、痛みが改善されることはありませんでした。

痛みとともに毎月の月経量も多くなって、そのせいなのか生理になると貧血を起こすようになりました。ただ座っているだけなのに急に気分が悪くなって、冷や汗が出 て、目の前が真っ白になる。「血の気が引く」というあの気分は本当にイヤなものです。

生理が始まると決まって下痢を起こすようになったのもこの頃です。下腹の痛みと貧血と下痢。それも少しづつ症状が重くなっていくようで、生理がくるたびに体力と気力が衰えていくのがわかりました。

このまま放っておくわけにはいかないと思って、アメリカの日系の病院で診てもらったところ、「卵巣に水腫が2つあるが、子宮は正常なので、様子をみましょう」と言 われ、ピルを処方してくれました。ピルを飲んでいる間は痛みはおさまっていたのですが、1カ月半後にピルを止めたら、痛みは前よりひどくなってしまいました。病気自体はちっとも治っていなかったのですね。


●生理の苦しみの中で広尾を知る
そのような状況の中、昨年の9月に帰国。そして、昔から婦人科では有名といわれている横浜の病院で受診しました。毎月、生理になると駅でしゃがみ込むほどの痛みがあると訴えたのですが、内診とエコーで診察してもらった結果は「月経困難症だが、子宮は正常」。なんだか納得できませんでした。帰国して初めての生理も痛みと貧血と下痢を伴ってやってきました。その苦しみの中で、なにか治療につながる情報はないものかと、コンピューターを使ってインター ネット上の検索ページで「子宮」と入力してアクセスしてみました。アメリカ留学中に授業でコンピューターを使っていたので、インターネットで情報を入手することには慣れていました。そして、思いがけず広尾の「子宮筋腫オンライン」に出会ったの です。

あ、これだ、と目の前がぱーっと開けていくのがわかりました。自分が探していた情報が、実に詳細に書かれている。しかも、自分と同じように生理で苦しんできた人がたくさんいる。ホームページを読んで、すぐに斎藤先生に電話をしました。


●悪さしているものが見つかった
初診は昨年の10月8日。一人で行きました。エコーに映った子宮には小石のようなコロコロしたものがいくつもあって、斎藤先生は即座に「筋腫と内膜症の合併症。でも、手術で治ります」とおっしゃいました。どこの病院でも「異常なし」と言われていたのに、あまりにも簡単に病名を告げられて、一瞬あっけにとられてしまったというのが正直な感想です。

斎藤先生には「質問があったら、いつでもいらっしゃい」と言われていたので、次回は母と一緒に、聞きたいことをメモに書いて行きました。この時の所見も初診と同じで、「放っておけば症状が進んで、これからも苦しむことになりますよ」とおっしゃいました。

私の生理が重く、顔色が悪くなったことを誰よりも心配していた母は、「悪さをしているものが見つかってよかったわね」と原因がわかったことにホッとした様子でし た。

手術を受けることを決めたのは、「生理が軽くなるのなら」という思いからです。斎藤先生は病気のことや治療については納得いくまで説明してくださいますが、決してご自分から「手術を受けた方がいいですよ」とはおっしゃいません。母も「手術を受けるかどうかは、あなたの気持ちで決めなさい」と言っていました。結局、手術することを決心したのは、初めて自分の身体にメスが入るという不安以上に、この生理の苦しみから解放されたいという思いの方がずっと大きかったのだと思います。


●今では生理がくるのが楽しみ
手術は12月9日。お腹にメスを入れることは生まれて初めての経験なので、もう ガチガチに緊張していました。私の身体が緊張でよほどこわばっていたからなのでしょう、看護婦さんに「息はしてくださいね」と言われてしまいました。その一言でなんだかフッと力が抜けて、気持ちが軽くなったように思います。そして、手術の間中、ずっと手を握っていてくださいました。手術台の上にいる私の不安な気持ちを「大丈夫、大丈夫」と包み込んでくれて、本当にありがたかったです。

摘出された筋腫は9グラム、それと卵巣の水腫が1つ。何キロもの筋腫を摘出された患者さんもいると聞いたので、それに比べれば私の場合はごくわずか。でも、このわずかな異物が悪さをして、生理のたびに痛い苦しい思いをしていたのですね。症状の重さは筋腫の大きさでは測れないものだということがよくわかりました。

年が明けて、1月26日。手術後、初めての生理がきました。少し腰のあたりが重いような気がしていたら、生理が始まりました。「あれー、これが生理?」と自分でも信じられないほど、生まれて初めて生理痛も貧血もない生理でした。量も驚くほど少なくて、嬉しくて嬉しくて、嬉し泣きしてしまいました。生理の間中、もうニコニコし通しでした。

 なんとかしてこの喜びを伝えたい気持ちで一杯だったのと、感謝の気持ちを表したくて、早速斎藤先生へお手紙を書きました。お返事をすぐにいただき、そのお手紙の中で一番ハッとしたのが「患者さんが自分で知識をつけて立ち上がるか、方法の無い(つまり子宮全摘)のが現状です」という言葉です。やはり、納得のいく方法を自分自身で選択することがいかに重要であるかを思い知りました。あれほど苦しかった毎月の生理が、今は嘘のよう。なんだか次の生理がくるのが楽しみです。

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