「4度の流産の原因となった腺筋症を克服しました」
レポートNo.21 

友利弘子(39歳)
●「腺筋症は手術で治る」と呼びかけた
友利弘子さん昨年11月、那覇市主催の女性セミナーで、子宮筋腫と腺筋症(内性子宮内膜症)をテーマにした講演会が開かれました。会場には若い女性を中心に50人ぐらいは集まったでしょうか。定員をはるかに上まわる盛況でした。それだけ子宮の病気に悩んでいる若い人が多いのだと思いました。

このセミナーで演壇に立った婦人科の女医先生は「腺筋症の治療法はホルモン剤を使ったものが中心で、手術では再発や癒着が起こる可能性が高く、妊娠を希望する女性に対しては施していない」と話しました。子宮筋腫の治療法についても、筋腫が小さいうちはホルモン療法が効果的で、核出手術によってある程度取り除くことはできるが、その場合は再発するケースも多いというお話でした。

講演のあとの質疑応答で、私は手を挙げました。「さきほどのお話では、妊娠を希望する女性に対しては腺筋症は手術ができない、治らないとのことでしたが、私はつい数カ月前、広尾メディカルクリニックという病院で、腺筋症の病変部分を取って子宮は残すという子宮保存手術を受けてきました。この病院では重症の腺筋症や子宮筋腫の患者に子宮保存手術を施していますが、術後に100例を超える出産が報告されています。私自身も妊娠を希望していますし、痛みとものすごい出血に悩まされていた日々からようやく解放されて、とても元気になりました。腺筋症は手術で治るんです。今日はその手術の経過などを記録したファイルを持ってきていますから、ご覧になりたい方はどうぞ見に来てください」と呼びかけたのです。

セミナーが終わると、私の回りには数人の人が集まり、「その病院を教えてください」という人や、広尾の電話番号を手帳に控える人もいました。さきほどの女医先生も熱心にファイルに目を通していました。


●初潮の時から始まった生理痛
私が広尾を知ったのは、手術のほぼ2カ月半前の昨年6月24日です。主人がインターネットの検索ページで広尾のホームページを見つけて、「こういう病院があるよ」と教えてくれたのです。その時、私達は出口の見えない長いトンネルの中でどう前に進んだらいいのかわからない状態にありました。私達、と書いたのは、腺筋症と闘ってきたのは私一人ではなく、常に主人が私の苦しみを受けとめて一緒に解決の方法を探し続けてくれていたからです。主人の支えがなければ、こうして苦しみの果てに斎藤先生に出会うことはなかったと思います。

結婚4年目に初めての妊娠で流産したあと、流産を繰り返し、6年の間に9カ所の病院や漢方医を転々としていました。流産には必ず何らかの原因があるといわれますが、私の場合は腺筋症がその原因のひとつではないかといわれていました。もっとも、腺筋症との診断がついたのは2回目の流産のあとで、それまでは「子宮筋腫があるが、それほど大きくないので様子を見ましょう」といわれていたのです。

「子宮筋腫がある」と最初にいわれたのは、結婚3年目に激しい下腹痛で婦人科を受診した時でした。医師は「数センチの大きさの筋腫ができているが、これが腹痛の原因とも思えない。子宮にばい菌が入ったのかもしれない」と言って抗生物質を処方してくれました。

下腹痛はその時が初めてだったわけではなく、生理時の下腹痛や腰痛は毎月のことで、思い起こせば中学生で初潮を迎えた時から下腹痛や腰痛は決して軽くはありませんでした。高校時代には生理になると学校を2、3日休んでしまうほどでしたから、母が心配して婦人科に連れて行ってくれたことがありました。その時は「子宮の発育不全によるもの」との診断だったと記憶しています。

しかし、大学生となり、社会人となり、結婚してからも、生理時の下腹痛と腰痛は相変わらずで、むしろ少しずつ症状は重くなって、結婚3年目に激しい下腹痛で再び婦人科へ駆け込むことになったのです。


●2年間に4度の流産
結婚4年目から6年目にかけての2年あまりは、辛く悲しいことが重なりました。

初めての妊娠を5カ月足らずで流産したあとに、腹痛や微熱がおさまらず、耐えられずに1カ月後に大学病院で受診したところ、なんと掻爬しきれなかった組織が子宮の中に残っていたということもありました。これが原因でいつまでも腹痛や微熱や悪露(おろ)が続いていたのです。

その時の大学病院の先生は「よく1カ月も我慢していたね」と気の毒がってくださり、流産のあとの妊娠についても親身に相談に乗ってくださいましたが、その後もほぼ半年ごとに妊娠しては流産し、2年間に4回の流産を経験することになってしまいました。度重なる妊娠と流産に、期待と落胆が交差する日々のなかで、妊娠がわかった時には「今度こそ、しっかりお腹の中にいてね」と毎日お腹の赤ちゃんに話しかけていました。

流産の悲しさ、切なさ、自責の思い。これは経験した女性にはわかっていただけると思いますが、4度目の時はただただ涙があふれて、泣き続けました。主人も泣いていました。


●スプレキュアで体調が悪化
大学病院で「流産の原因はおそらく子宮筋腫があるため。筋腫だけでも取り除いておきましょう」と手術を勧められた時には、これで流産を繰り返さずに済むと思いホッとしたものです。

ところが、術前の検査も終わって、あとは手術を待つばかりという時になって、病院から電話があり「検査の結果は子宮筋腫ではなく腺筋症だった。腺筋症は手術をしても癒着が起こり、ますます不妊の原因になると思われるので、手術は取りやめます」とのこと。また落胆の底に突き落とされたようでした。

治療に通っていた6年あまりの間に、この大学病院を含めて2つの病院で手術が検討されましたが、結局はどこでも「手術は無理」とのことでホルモン治療を受けることになりました。スプレキュアを半年単位で3回、合計すると1年半使いましたが、スプレキュアをやめると出血量は以前にも増して多くなり、腹痛や頭痛などもひどくなりました。ものすごい出血量なので貧血も進んでしまい体調は最悪でした。


●「完治は子宮全摘以外にない」と言われて
ホルモン療法に頼っていては身体がダメになると思い、漢方や食事療法など効果がありそうなものには取り組んでみたのですが、あまりはかばかしい結果は得られませんでした。

その頃私を悩ませていた症状のひとつがおりもので、水のようなおりものがシャーシャーと流れ出ることがよくあり、大学病院で「おりものがひどいんです」と訴えましたが、医師は「そんなに心配する必要はないと思いますよ」とあまり真剣に受けとめてはくれませんでした。

婦人科の権威の先生がいるという県立病院にも行きました。広尾で手術を受ける約1カ月ほど前、ここの不妊科を訪れ、ホルモン治療で体調が悪くなった経緯を話した上で腺筋症の治療法を聞いてみましたら、「その病気を治したかったら子宮全摘以外にないよ。子どもがほしかったら、今までと同じ治療しかない」とハッキリ言われました。

明るい見通しが何ひとつない状態で、これから先、いったいどういう治療を受ければいいのだろう…。暗い思いに閉ざされていた時、私達はインターネットで広尾のホームページに出会ったのです。


●貧血の治療、そして手術
ホームページを読んで、「ここで手術をしていただこう」と心を決めるまで時間はかかりませんでした。さっそく手術の申し込みをし、こちらの病院で検査したデータを先生にお送りしたところ、「貧血がひどいので、このままでは手術できません。術前に輸血をして正常値に戻しておく必要があります」とのご連絡をいただき、手術に先駆けて鶴見の佐々木病院に入院し、輸血を受けました。ここは広尾の術前・術後の検査を引き受けている病院ですが、入院中に斎藤先生が訪ねてきてくださり、いろいろなお話を聞かせてくださったので、手術に対する不安を感じることなく手術日を迎えることができたのはとても幸せなことでした。

手術で摘出された腺筋症の病変部分は341グラム。手術後に、これまでどこの病院でも「手術はできない」と言われていたものが、こうして摘出されたという事実を目の当たりにして、先生の技術力のすごさに感謝せずにはいられませんでした。

腺筋症は手術で治るのです。このことを、ぜひ多くの女性に知ってほしいと思います。術後5カ月が過ぎて、生理時の出血量は手術前の4分の1ほどになり、生理痛もほとんどなく、本当に元気になりました。腺筋症のために辛く悲しい結果となった4度の妊娠が、今度こそ喜びに満ちたものになりますようにと祈りながら、妊娠する日を待っています。
術前のMRI術後3カ月のMRI
術前のMRI 術後のMRI


術 前(pre ope)術後3カ月(post ope)
赤血球(RBC)415514
ヘマトクリット(Ht)25.045.4
血色素(Hb)6.314.8
CA-12525040
備考摘出物:341gm
病 理:腺筋症(Adenomyosis)


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