「腺筋症を克服して別人のよう。質問があればEメールをください」
レポートNo.34

坂本志津子(33歳)
●ひどかった貧血
広尾で手術を受けるまでの私は、ものすごい貧血でした。駅や会社の階段を上がろうとすると、心臓がバクバクと悲鳴をあげ、冷や汗がドッと吹き出して、とても最後まで上れませんでした。1年中夏バテのようにだるく、会社の友人たちからも「体力がないねえ」と言われ続けました。みんなで行ったキャンプでも、立ち働くとすぐに疲れてしまうので、みんなが水汲みに何往復もするところを1回だけで免除してもらう有様でした。

会社の健康診断の結果は、いつも「貧血がひどいから、すぐに病院に行くように」と言われました。ヘモグロビン値が4.6ということもあり、疲れやすいのは貧血のせいだとは思っていましたが、その貧血が腺筋症による大量の出血が原因だとは全く思いもよりませんでした。


●スプレキュアを使用
生理の異常に気づき始めたのは24歳の頃でした。生理になると下腹痛と出血がひどく、心配になって近くの国立O病院の婦人科に行ったのもこの頃です。診断の結果は内膜症とのことで、スプレキュアを使うことになりました。半年使って半年休む、という内膜症の治療の定番です。たしかにスプレキュアを使っている間は生理が止まっているので痛みと出血からは解放されていますが、絶えず頭がボーっとして、物忘れすることが多かったのは、スプレキュアの副作用だと思います。長く続けると肝臓に負担をかけるということも気になっていました。

半年たってスプレキュアを止めると出血がものすごくて、痛みも並大抵ではありません。痛み止めのボルタレンを病院からもらっていましたが、それもあまり効かず、睡眠をとるために坐薬を入れても、ほんの少し眠ると痛みでまた目が醒めてしまうという状態でした。寝るときにはナプキンの上から大人用の紙オムツをしていましたが、それでも布団を汚してしまうこともあり、夜中に布団の汚れを始末するときなど痛さと止まらない出血で泣きたくなるほどでした。吐き気もあって、食欲もまったくありませんでした。


●デリカシーのない大病院
出血が止まらずフラフラになると、入院用の荷物を持ってO病院に駆け込み、入院させてもらったことも1度や2度ではありません。数日間入院して増血の治療を受けると身体がラクになるのです。

こんなふうでO病院の医師には長いことお世話になっていましたが、症状は重くなる一方で、MRIとCTの検査の結果「子宮を取るしかない」と言われたのは32歳のときでした。

国立病院の医師というのは、すさまじい忙しさです。診察のときにじっくり話をすることなどとても無理で、廊下ですれ違っても小走りで先を急いでいるので話しかけるきっかけもありません。廊下1本を隔てて、片方は新生児の泣き声に包まれ、もう片方の病室には子宮を取った人が横たわっているというのも残酷なものです。

「なんてデリカシーがないんだろう」と通院中に何度も感じてきましたが、長い間経過を診てきて最後にはいとも軽々と「子宮を取ってしまえば楽になりますよ」という医師の言葉がどれほど患者を苦しめることになるか、そのデリカシーのなさに腹が立ちました。このことは多くの大病院に共通することだと思います。


●医師に広尾のHPを見せた
インターネットのデザイナーという仕事柄、広尾のホームページは前から知っていました。内膜症に関する情報を得たいと思って検索したところ、最も充実した情報を開示していたのが広尾のホームページでした。

「子宮を取るしかない」と言われて、次の診察日に「子宮保存手術をしているこういうクリニックがあります」と広尾のホームページをプリントアウトして持って行き、医師に見せました。「広尾?知らないなあ」「レーザーによる子宮保存手術?うーん、どうかなあ」というぐらいの反応しかなく、それ以上の話には発展しませんでした。「先生もホームページにアクセスしてみてください」とお願いしましたが、はたして読んでくれたでしょうか。

大病院の医師は忙しさにかまけて不勉強だ、とそのときに思いました。インターネットによって世界的な規模の情報が得られるこの情報化時代に、自分の診療技術以外に関心を示そうとしない、他の医療機関の情報をチェックしようとしない医師の閉鎖性を感じるのは私だけでしょうか。


●Eメールでの質問に応じます
国立O病院での治療に見切りをつけて、広尾で手術を受けることを決心したのは、玉城薫さんから電子メールでいろいろな話を聞けたことが決め手になりました。玉城さんは腺筋症を斎藤先生の手術で克服された元患者さんで、このホームページの体験談にも登場しています。体験談を読むうちに私の症状とぴったり同じなので電子メールでいくつかの質問を書き送ったところ、すぐに丁寧なお返事をくださったのです。

斎藤先生の手術によって痛みと大量の出血から解放されたこと、健康を取り戻して術後3週間でヨットで海上に出たことなど、ホームページで語られていることが真実であることを確認し、広尾への信頼感を深めました。

玉城さんとのやりとりによって決断した私自身の経験からも、術前・術後について分からないことやもっと詳しく知りたいことがあれば、経験者に聞くとよいと思います。
私の電子メールのアドレスは、sakamoto@hh.iij4u.or.jpです。お聞きになりたいことがあれば、どうぞなんなりとメールをください。


●すべての病気にオサラバした
手術をしたのは98年8月24日ですから、ほぼ10ヶ月がすぎました。

玉城さんからも聞いていた通り、生理のときの出血量は100分の1ぐらいに激減しました。下腹部がちょっと重苦しいような感じはありますが、もちろん痛み止めなどは使っていません。

しょっちゅう風邪をひいていたのが、術後は風邪をひかなくなりました。いつもだるかったのも、めまいもなくなって、すべての病気にオサラバした気分です。今になって、腺筋症がすべての症状の原因だったことがよくわかります。

階段を上ったり、バスと電車を乗り継いで出かけることもできるようになりました。なにしろ手術前は、痛みと出血がひどくて仕事に出かけることもできず、やむを得ず外出するときも車で移動するしか方法がありませんでした。「もう一生、車の生活しかできない」と思っていたのが嘘のように、今はどこまででもバスと電車で出かけています。1ヶ月間休みなく動くことができ、旅行などの計画を立てるときにも生理のことを心配しなくて済むようになりました。手術前の自分を思うと、まるで別人のようです。


●やさしい斎藤先生
忘れられない思い出があります。貧血がひどかった私はこれを改善しなくては手術を受けられないため、手術前の土・日に鶴見の佐々木病院に入院して輸血を受けました。

手術前の不安に加えて馴染みのない病院で心細い思いをしていると、斎藤先生が果物などを持ってお見舞いに来てくださったのです。栄養をつけて手術に臨むようにとのお心遣いですが、まさか執刀してくれるドクターが手術前にお見舞いに来てくださるとは思いもよらず、とてもびっくりしました。

このときの「やさしい先生だなあ」という思いは、入院中も退院するときも、そして退院後にも折にふれ感じてきました。お世話になったお礼の意味でも、広尾のホームページにアクセスした人で広尾のことをもっと聞きたいという人のお役に立てればと思っています。
術前(pre-ope)
のMRI
術後(post-ope)
3ヶ月のMRI
摘出物
術前のMRI 術後のMRI 摘出物摘出物
術後の保存子宮

術後の保存子宮


術 前(pre ope) 術 後(post ope)
赤血球(RBC)327506
血色素(Hb)(g/dl)8.214.4
ヘマトクリット(Ht)(%)26.343.2
CA-1258010
備考
●横切開、10cm
●麻酔:硬膜外
●摘出物 :
  腺筋症                  120g
  内膜ポリープ(polyp)     0.1g
●病理:各々悪性ではない
●出血量:188ml
●術前輸血:800ml
●術後のMRIは術後3ヶ月のもの


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