「手術後5ヶ月で妊娠、間もなく出産です」
レポートNo.38

高橋理絵(26才)
●すべてが望み通り
ただ今、妊娠36週目で、間もなく出産です。

おなかの中で元気に動いている赤ちゃんは女の子で(妊娠5ヶ月目に斎藤先生がエコーで診て、教えてくださいました)、女の子が欲しかった私は今からわが子との対面を心待ちにしています。

広尾で手術を受けたのは昨年の6月29日で、妊娠がわかったのはその年の年末。術後5ヶ月あまりで妊娠したことになります。妊娠中は特にトラブルもなく、順調に出産の日を迎えられそうです。

妊娠5ヶ月目に妊娠の報告をしに広尾に伺って、おなかの赤ちゃんをエコーで診ていただいたときに、「どっちが欲しいの」と先生に聞かれ、「女の子」と答えると、「あなたの望みは全部叶ったじゃないの」と先生に言われました。その通りなのです。手術後のベッドの上で「来年の今ごろはもう赤ちゃんが生まれているか、妊娠しているといいなあ」と願い、「赤ちゃんは女の子がいいなあ」と夢に描いたことがもうすぐ現実になるのです。


●挙式2ヶ月前に不正出血
子宮に病気があることがわかったのは、平成8年の9月。挙式の2ヶ月前でした。不正出血があり、気になって近所の病院で診てもらったところ、「子宮が丸く膨らんでいる。おそらく内膜症か子宮筋腫でしょう」とのことでしたが、不正出血のほかにはこれといった自覚症状がなかったため、「しばらく様子を見ましょう」ということになりました。

結婚を2ヶ月後に控えてのこの診断は、とてもショックでした。子宮筋腫は中年以降の病気だと思っていましたし、母方の伯母も筋腫で子宮を全摘していので、これは困ったことになった、と落ち込んでしまいました。

私の結婚を心から喜んで挙式を楽しみにしている両親には、とても話すことができませんでした。打ち明ける相手は彼一人しかいませんでしたが、男性にとって子宮の病気は理解を超えるもののようで、「僕たちは運が強いから大丈夫だよ」とあくまで楽観的でした。彼が深刻に考えなかったのはありがたいことではありましたが、私自身は彼のように楽観的になることはできず、もし子供ができなかったらどうしよう、とそればかり考えていました。


●すぐに妊娠、そして流産
ところが、結婚して4ヶ月目に思いがけず妊娠していることがわかりました。その時の気持ちは、「な〜んだ、筋腫があってもちゃんと妊娠するんだ」という安堵と、「妊娠すると内膜症は治るというから、これをきっかけに病気も治るかも…」という期待が入り交じったものでした。

そんな期待もつかの間で、妊娠8週目で流産。ショックではありましたが、まだ結婚したばかりで暫く二人だけの生活を楽しみたい気持ちもあって、「今回のことは、妊娠できる子宮であることがわかっただけでもよかった」と、どこかホッとする気持ちもありました。近所の病院の医師からも流産の原因については特に説明はなく、「若いし、またできますよ」と言われ、私もそんなふうに思っていたのです。

しかし、結婚早々の妊娠と流産のあと、また不正出血に悩まされることになりました。毎月の生理にも変化が現われて、月を追うごとに生理の量が増えて、最も量の多い2日目には貧血でめまいがするほどなのです。

生理がひどくなった原因は、妊娠によってホルモンの分泌が変化して子宮筋腫が大きくなってしまったためでした。すぐに流産してしまったのに、筋腫の方は妊娠が引き金になってどんどん育ってしまったのです。


●精神的な苦痛
どうしよう、どうしよう、と思い悩みながらも、誰にも相談できないまま日が過ぎていきました。母に話せば心配するに決まっているし、友達にも言う気になれず、自分一人で悶々と悩んでいました。このまま放っておいてよいのだろうか、もしかしたら妊娠できなくなるのではないだろうか、という不安が絶えずつきまとい、精神的に追い込まれていく日々でした。

そうして1年。ひどくなる一方の生理と病気への不安に解決の糸口を与えてくれたのは、自宅のパソコンにつないだインターネットでした。子宮筋腫と内膜症についての情報を集めようとアクセスして、広尾のホームページに出会ったのです。

ホームページには手術後に妊娠、出産された元患者さんの体験談が載っています。これを読んで、私は跳び上がりたいほど嬉しくなりました。「これで赤ちゃんができる!!」と思ったのです。

早速、広尾に電話をして初診の予約をとり、足を運びました。広尾が住まいからそれほど遠くないという点も幸運でした。

初診のときの斎藤先生の言葉は忘れられません。「子宮がリンゴぐらいの大きさになっている。それもリッパな富士で、紅玉じゃないよ。この子宮じゃ赤ちゃんはできないよ」とハッキリおっしゃるのです。以前に近所の病院で言われた「若いし、またできますよ」とは何という違いでしょうか。


●心待ちにした手術
鶴見の佐々木病院でMRIなどの検査を受けたときも、手術日を待つ間も私は嬉しくてたまりませんでした。手術が終われば、何の迷いもなく妊娠に向けて一直線に進んでいけるからです。

手術日は昨年の6月29日。筋腫245グラムと内膜ポリープ5グラムを摘出していただきました。手術前の最後の生理のときはナイト用ナプキンを4枚重ねてもしみ出るほどの出血でしたが、この多量の出血は内膜ポリープからのものだったと先生から聞きました。

手術には夫と妹が付き添ってくれました。筋腫と内膜ポリープを摘出したところで夫が手術室に呼ばれ、病巣部分を切り取って子宮を保存したこと、卵巣は正常であることなどの説明を受け、その場で術中の子宮と卵巣を確認しています。退院時に先生からいただいた手術の経過を記録したファイルには、夫が肉眼で見たこの術中の子宮のカラー写真もおさめられています。

ファイルには術前のMRIの画像や術中の摘出物の写真のほか、先生の自筆による手術の経緯が書かれていて、これを見た夫は「ここまで患者に情報公開するのはスゴイことだ」と驚いていましたが、私も全く同感です。


●「妊娠」を示すサイン
手術後はきわめて順調で、2週間後には父親の入院に付き添うことができました。手術を6月29日に決めたのも、父の入院を控え、その前に私自身が健康を取り戻しておきたかったためで、予定通り父の入院の日までにほぼ快復し、父の看病に当たることができたのは幸いでした。

術後25日目に生理が始まりました。このときは出血の量があまりに少なくてビックリしてしまいました。「えーっ、こんなに少なくていいの?」と思わずつぶやいてしまったほどで、今までの生理がいかに異常であったかをつくづく感じました。

そうして夏が過ぎ、秋が深まり、生理が4回きちんと続いたあと次の生理予定日になっても生理が始まりません。ひょっとしたら妊娠?、と市販の妊娠試験薬で調べたところ、反応はマイナス。

ところがそれから1週間たっても生理は始まりません。再度、試験薬でチェック。そして、跳び上がりました。「妊娠」を示すサインがくっきりと浮かび上がっていたのです。

今、おなかの中で出産の日を待っている赤ちゃんは、こうして私の胎内に宿りました。斎藤先生に出会わなければ、おそらく宿ることのなかった生命です。出産は帝王切開で今月の後半になる予定ですが、待ちに待ったわが子の誕生までの日々を元気に過ごしたいと思っています。
術前(pre-ope)
のMRI
術後(post-ope)
のMRI
術前のMRI 術後のMRI


術 前(pre ope) 術 後(post ope)
赤血球(RBC)481483
血色素(Hb)(g/dl)13.814.2
ヘマトクリット(Ht)(%)43.141.7
備考
●切開部:横切開、8cm
●摘出物 :
  子宮筋腫                  245g
  内膜ポリープ(polyp)         5g
●病理:良性


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