「心に深い傷を負った職場の人の一言」
レポートNo.43

松村由美(30才)
●苦しみ続けた日々
思えば、中学生の頃から生理痛は重く、市販の鎮痛剤を飲まずには過ごせませんでした。市販の鎮痛剤で痛みが治まっていた頃はまだよかったのですが、就職した20歳の頃には、ほとんど気休め程度にしかなっていませんでした。

数年後には、生理のひどい時は立ち上がったり、動き回ることさえできず、とても仕事などできる状態ではありませんでした。ただただ、横になり、痛みにうめき声をあげるしかない状態でした。ひたすら、大事な仕事の日と生理が重ならないよう祈るしかありませんでした。


●婦人科受診・・・子宮腺筋症
母は婦人科に診察に行くことをすすめましたが、恥ずかしいなどの気持ちから診察に行く気になれず、25歳で結婚したのを機にいくらなんでもこんなに痛いのはおかしいだろうということで、初めて婦人科を訪れました。

MRIなどの検査結果から先生の診断は、「子宮腺筋症」ということでした。その時点で子宮腺筋症の詳しい知識があったわけではありませんでしたが、「ああ、やっぱり病気だったんだ。」と不思議と納得しました。


●治療・・・骨粗鬆症
はじめはとりあえず、強力な鎮痛剤をもらうだけでしたが、そのうちその効力も薄れてきました。私の子宮は時間を経るごとに大きく肥厚していくばかりでした。先生は治療方法としては子宮摘出か、擬閉経療法があるけれど、私はまだ出産する可能性もあるだろうということで擬閉経療法を選択され、スプレキュアというホルモン剤を半年間続けました。

他の方の体験談を見ていると、スプレキュアの副作用がつらいとよく書いてありましたが、私はそういうこともなく、生理がないのでとても快適な半年間が送れました。

しかしながら、この治療法で確かに子宮は小さくなったらしいのですが、また生理が来るようになれば同じことの繰り返しです。その後、鎮痛剤で痛みを抑え、抑えきれなくなるともう1クール(半年間)スプレキュアでのホルモン療法を行いました。その結果、骨密度が減少し、骨粗鬆症の薬も処方されるようになりました。


●精神的苦痛
もう、ホルモン療法はできません。ただただ、鎮痛剤で痛みを抑えるしかなく、生理の期間中、2日ほどは必ず仕事を休むしかありませんでした。痛みのあまり、夜も全く眠れませんでした。体験談レポートにみなさんよく書いておられますが、本当に死んでしまった方が楽なのではないかと思いました。

会社は男性の多い職場で、毎月腹痛のため休むので変に思われていましたが、課長に正直に病名や症状を打ち明けると、最近は女性に多い病気だからと理解し同情して下さって少し気が楽になりました。
しかし、どうしてもはずせない大事な仕事の日に私が休んで実際に困る同僚や上司はどう思っているだろう?今から思えば、みんないい人たちなのですが、痛みに苛まされ続ける私は精神的にもますます不安定になって行きました。


●決断
その頃インターネットで広尾メディカルクリニックを知りました。 子宮を残して腺筋症を治せるのは魅力でしたが、料金が高額であることなどから躊躇していました。

この頃にはひと月の半分以上の間、激痛ではないにしろ下腹部と腰に痛みがあり、痛みのひどい時には嘔吐することもあり、子宮は大きくなりすぎて膀胱を圧迫し、頻尿にもなっていました。かかりつけのの先生は、もう外科的処置をしかないとおっしゃいました。出産する可能性があるからという意味だけではなく、ホルモンのバランスを崩したくないから子宮は摘出したくありませんでした。

そんな6月初旬のある日、腹痛のため早退させてほしいと上司に言ったところ、「また?」と言われました。その人にとっては他意はなかったのでしょうが、私は深く傷つきました。心の痛みと下腹部の痛みに泣いている私を見て、主人が「診察に行こう、予約しておきなさい。」と言ってくれて、広尾メディカルクリニックを訪れ、そして、斎藤先生は力強く「救えるよ。」と言って下さったのです。


●子宮保存手術
そして、次の生理を待たずに平成10年6月29日に手術していただくことになりました。

麻酔は下半身のみのはずなのですが、手術中の記憶はほとんどありません。すごく寒かったことだけ覚えています。術後の手術創痛みもいつもの生理痛に比べたら大したことはなく、快適な入院生活でした。歩けるようになったら同じ日に手術した方と一緒に食事をとったり、おしゃべりしたり、今でも、メールなどで連絡を取り合っています。

退院後1カ月くらいしたら生理になると聞いていましたが、ちょうど1カ月後に生理になりました。それまでは、生理が始まる1〜2日前から激しい痛みがあって、もうすぐ始まるんだなというのがわかったのですが、その時は、生理が始まったことにも気付きもしませんでした。全く痛くなかったのです。どれほど感激したでしょう!本当に言葉では言い表せないほどでした。
早速、斎藤先生に報告とお礼のメールを書きました。

あんなに苦しかった痛みから解放して下さった斎藤先生には感謝してもしきれないほどです。現在は事情があって以前の職場は退職しましたが、何をするにしても生理痛のために制限されていた手術前とは違い、何でもできる可能性を大切にしてこれからはいろんなことに挑戦して行きたいと思っています。

斎藤先生、広尾メディカルクリニックのみなさん、本当にありがとうございました。そして、これからも以前の私と同じ苦しみに耐えている女性たちを救ってあげて下さい。
術前(pre-ope)のMRI 術後(post-ope)のMRI
術前のMRI 術後のMRI
摘出物
摘出物 摘出物


術 前(pre ope) 術 後(post ope)
赤血球(RBC)424446
血色素(Hb)(g/dl)12.713.3
ヘマトクリット(Ht)38.340.2
CA-12539030
備考
●横切開       10cm
●麻酔・硬膜外・腰椎麻酔
●摘出物 :腺筋症(Adenomyosis) 260g
          子宮内膜ポリープ       7g
●病理:悪性ではない


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HIROO MEDICAL CLINIC