「わたしの広尾メディカルクリニック体験談」
レポートNo.45

町 雅子(34才)
「夏休みをどう過ごしましたか?」 私はというと、8月11日、ただいま入院中。通信がお手元に届いたときには退院しているわけですが、これを書いているのは病室です。子宮筋腫を取る手術をしてもらいました。8日(月)の朝に入院し、午後に手術、その夜は麻酔が切れた後のお腹の痛みに苦しみました。火曜はお腹のガスがなかなか出なくてそれでちょっと苦しみましたが、夕方には歩き始め、ワープロも打ちました。水曜にはお腹に刺していた管(出血や浸出液を取り出すため)を抜いてシャワーを浴びました。点滴と、お腹の傷の痛みをかばって前かがみに恐る恐る歩いていることを除けば、気分は良好です。

ことの始まりは4月末。内臓に何となく違和感があるのが気になって、会社の帰りにちょっと時間があったので、行きつけだった等々力の内科にふらっと寄ってみたのでした。先生が超音波でお腹を診て「これは内科じゃなくて婦人科ですね。すぐに婦人科に行くように。」そして近くの婦人科に紹介状を書いてくれました。

それからしばらくの期間、婦人科でいろいろな検査をしました。とにかくお腹に10pくらいの大きなカタマリがあるというのです。「超音波の専門の先生に診てもらいましょう」「超音波ではわからないのでCTスキャンで検査をしましょう」「CTではわからないのでMRIが必要です」MRIとは磁気共鳴画像というもので、強烈な磁力線を出してそれでお腹の中を映像化するのです。装置が高価なので大病院にしかないということ。婦人科の先生のお兄さんが大学の婦人科の助教授だということで、その大学病院で検査をしてもらいました。助教授の先生は「子宮が腫れているのか卵巣なのか開腹してみないとわからない。子宮筋腫の場合、筋腫だけを取るようにします。ただし、100%子宮を残すとは言えない。」子宮を全部取ってしまう可能性が10%あると言うのです。いくら10%と言われても、手術が終わってみたら既に子宮はなくなっていて「その10%でした」と言われたらおしまいだし…。これが7月半ばのことです。

その間に本も少し読みました。子宮筋腫・子宮ガン卵巣腫瘍の本や『病院の検査がわかる本』、『日本の名医』といった類の本などを買って読んだり立ち読みしたり。たまたま買った本『子宮をのこしたい10人の選択』(婦人画報社)はその中の1冊でした。それはレーザーメスを使った子宮筋腫の手術の話でした。読んでみると、レーザーメスを使うと出血が少なくてすむので、出血多量のために子宮を全部取ってしまうことが非常に少ないし、小さな筋腫まで残さず取れるらしい。これはいい。健康保険がきかないので自費と知ったときはちょっと躊躇しましたが、払えない金額じゃありません。夫にもこの本を読んでもらい、この先生に診てもらおうということになりました。大学病院で「子宮を残す確立90%」と言われた数日後にこの先生の病院に電話をし、診察を受けました。「大丈夫ですよ、子宮を残せますよ」という先生の言葉、予想していたとは言え、あまりにあっさり言われて「ほんまかいな」と拍子抜け。さっそく手術の予約をすると、何と超ラッキーなことに、会社の夏休みが始まってすぐ手術が受けられることになったという訳です。

手術は腰椎麻酔でした。腰から下はほとんど感覚がないのですが、意識はあります。アイマスクをつけているので周りは見えませんが、手術室の中の空気が張りつめている感じが伝わってきます。私は「通信のネタにしよう」と意識を集中させていたのですが、気がつかないうちにお腹が切られていたようでした。お腹が引っ張られるような感じがして、どうやら手術が始まっているようだと気がつきました。先生が「卵巣は正常ですよ、子宮も残せますよ」と声をかけてくれました。そして、お腹の中から何かを引きちぎって取っているような感覚。きっと筋腫を取っているんだろうな。そのうち私は緊張のせいか脳貧血のようになってしまい、気持ち悪くなるやら息苦しくなるやら。しかし手術の方は無事進んでいるようで、髪の毛を焦がすような匂い(レーザーで何かを焼き切ったのか)がしていました。その後、急に雰囲気が静かになってどうやら手術が終わったようです。この間、約1時間半。

取ってもらった筋腫は560gありました。ホルマリン漬けの筋腫をビニール袋の上からさわると、ゴリゴリした感触で骨のようでした。固さにびっくり、もっとも筋腫が大きいから症状が重いというものでもなく、小さい筋腫でもできた場所によって症状が重いそうです。私の場合これといったひどい症状がありませんでした。先生には「こんなに大きなものがあったのに、鈍いというか…」と言われてしまったくらい。確かに言われてみれば、以前に比べて生理痛が重くなっていたし、出血量も多くなっていたけど、寝込んだり、貧血になったりするほどではなかったので、まったく気にしていなかったのです。

この病院は(というより先生がというべきか)ちょっとフツーじゃありません。木曜の夕食時、見舞いに来ていた夫と私に先生から何と缶ビールの差し入れが!もう飲んでもいいんですか?と看護婦さんに聞くと「隣の部屋の方は昨日から飲んでますよ」だって。金曜のお昼には、患者2人を含め病院内のスタッフそろって(といっても全員で10人)、快気祝いのお食事会。会場は病院内のリビングダイニングです。病院の中にこういうスペースがあるのも不思議です。シャンパンを抜いて乾杯!食事の後にはデザートのケーキとコーヒーまでいただきました。さらにその晩は消灯の9時過ぎから1時頃まで先生とおしゃべり。「おやすみなさい」のあと看護婦さんに睡眠薬をもらって本当の消灯。

こんなのアリ? もっとも入院患者の方もちょっと変わっていたようです。今週の入院患者は私とYさんの二人。Yさんは退院の日になんと和服に着替えるという“超”粋な方。相当珍しいと思うよ。私はというと、病室にワープロを持ち込んで、こうやってしこしこと書き物をしているというワープロオタク(?)。患者さんから「そういう患者さんは初めてですね〜」と言われました。

てなわけで、5泊6日の入院生活を終えて、実家で8泊9日、ゴロゴロしながらこうしてワープロして、これが私の夏休みでした。

P.S.夏休みあけから社会復帰してます。

『たんぽぽ通信』(第59号・1994年9月発行/編集発行人:町雅子さん)から

術前(pre-ope)
のMRI
術後(post-ope)のMRI 摘出物
術前のMRI 術後のMRI 摘出物


術 前(pre ope) 術 後(post ope)
赤血球(RBC)353432
血色素(Hb)(g/dl)10.913.8
ヘマトクリット(Ht)33.940.8
CA-1254916
備考
●切開部       6cm
●両側卵巣正常
●摘出物 :    562g


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