「アンティーブの風に乗って・・・」
レポートNo.53

フランス在住
琴多樹瑠(38才)
●半信半疑のまま日本へ・・・
2000年を迎えようとしている前年の秋、私はここ、南フランスのコート・ダジュール(紺碧海岸)といわれる一帯にある港町のひとつ、アンティーブをあとに、ニース空港からフランクフルトを経由して成田に向かった。久しぶりの日本。目的は沢山あったが、その一つは“広尾メディカルクリニック”。

インターネットで見つけたひとつの出会い。機内の私はまだ半信半疑。
いくら体験談が載っていたとしても、それを鵜呑みにはできない。
癌から水虫まで何にでも効果があるようなうたい文句の健康食品や、顔と体が明らかに違う人の合成写真と判る、やせるための商品だって‘体験談’が載っているもんね。

自分の目でクリニックと医師を確かめなくちゃ!
怪しいドクターだったらやめようっと。
小さなけがは沢山あれど、手術となったら初めてだもの。
親にもらった大事な身体。簡単に傷つけるわけにはいかないわ。

インターネットで‘子宮筋腫’を検索してみた時は、特に何も期待していなかったように思う。
高校生の時からメンスの度に、痛みと貧血で随分と苦しんできたけれど、ひどいのは2日間ぐらいで、今まで鎮痛剤や漢方薬やらで何とか暮らしてこれた。

ところがどっこい!
数カ月前のメンスの時、何日経っても血が止まらなくて、それも半端な量じゃないし、『このままじゃ、私、死んじゃうよ〜』って思った。近所のクリニック(フランス人ドクター)を訪ね、増血剤とピルを処方してもらって3ヶ月間決まりどうりに飲んだけど、これって、根本的な解決にはならない。

エコーも撮った。ドクターの結論としては、貧血がこれ以上ひどくならない内に切った方がいいってことだった。でも、私の子宮は無事に済むのだろうか。それが問題だ!


●不安や疑問が薄れ、手術を決意
たどり着いた“広尾メディカルクリニック”。
全然クリニックらしくないのだ。普通のお家みたいだ。
斎藤Dr.はというと、ひょうひょうとしていて、芸術家みたいな感じ。
スタッフもみんなとても感じがいいし。
覚悟していた内診がなくて、他の病院とは違うなあ。

せっかく行ったんだから、MRIとやらだけでも撮ってみようと予約状況を聞いてもらったら(近所の提携病院に撮りに行く)、幸運なことに夕方からできることになった。

検査に行くまでの時間、アメリカから術後検診に帰国したというM子さんと、2階のリビングでいろいろなことを話す機会に恵まれ、不安や疑問が薄れていった。斎藤Dr.も話に加わって、不思議な魅力を振りまいている。

数時間後、検査結果を持参して再び、斎藤Dr.のもとへ。淡々とした、しかし暖かさが伝わってくる説明に、手術を受けることを決意した。


●手術って腹ぺことの戦い?!
初めにクリニックを訪ねた翌月、いよいよ手術。
超!楽天的な私は歯医者さんに行くのと同じような心持ちで入院。
これも斎藤Dr.の人柄がなせる業かな?(全幅の信頼を置いている証拠だよ。) この日の3番目の手術ということで、時間はたっぷり。

看護婦さんは可愛くて優しいし(優しいだけでなく、厳しい面もあることが、術後わかった。それは全て患者のために。)、緊張感もなく、個室だし、取り揃っているビデオテープの中から見たかった映画を選んで、2本も観賞しちゃった。

でも・・・あ〜、お腹が減って死にそうだなあ。のども渇いたし。砂漠でお水がない時みたい。頭に浮かぶのは、美味しそうな食べ物とキ〜ンと冷えた飲み物ばかり。

さて、手術。
1時間45分の貴重な体験。
麻酔のドクターが『痛いですよ!』と何度も言うので、覚悟したのに麻酔はそんなに痛くなかった。これくらいヘっちゃらだい!
斎藤Dr.も看護婦さん達も、今までよりずっと真面目な面持ちだ。

手術中、麻酔のドクターが『眠くなったら寝ていいですよ。』と何度も声をかけてくれたけど、お腹を切っている感覚はないのに、頭は起きていて眠れない。
しかし、B.G.M.に大好きなレゲエミュージックがかかった途端に、私は吸い込まれるように深〜い眠りに落ちていった。斎藤Dr.が後日、『劇的だった。』っておっしゃった。好きな音楽が腹ぺこを忘れさせてくれたのかな。

手術中、夢を見た。夢の中でも手術を受けていて斎藤Dr.が『終わったよ。』と言ったから目を覚ましたのに、本当はまだ終わっていなくて、その後が長く感じて大変だった。
お腹の中を引っ張られている感じがして、ウェ!気持ちが悪いよ。筋腫を引っ張っているのか、縫合のためにお腹の肉を引っ張っているのか、私にはわからないけど、早く終わってほしいなあ。なんてったって、私は腹ぺこなんだから。


●普通の歩幅で歩けるじゃないの
翌日は頭がク〜ラクラ。こんなクラクラ経験は初めてだけど、手術はうまくいったんだし、元気になるためにがまんするんだ。

切り取った筋腫との御対面は、想像していたモノとは違っていた。フニャフニャしているかと思っていたのに、コチコチ、コリコリ。 ふ〜ん、こんなのがお腹に陣取っていたのか・・・

斎藤Dr.が様子をみにやって来て、筋腫が全部とれたこと、子宮が温存できたこと、そして『卵巣も卵管もきれいでした。』とおっしゃった。ジワジワっとうれしさが込み上げる。
自分ではまだ見ることができないので、気になっていた傷の大きさをたずねたら、『あなたのクチの大きさぐらいだよ。』と言って、親指と人さし指で示してくれた。
そうか、私の可愛いおちょぼ口(?)と同じくらいか。安心、安心。

手術後、最初に飲んだお水の美味しかったこと!
自力でお手洗いに行けたらお水が飲めるとあって、がんばったもんね。
食事も毎回きれいに全部食べた。友人が差し入れてくれたプリンとかもしっかり平らげて、日に日に元気になる感じ。
あっという間の入院生活。

斎藤Dr.がつくってくれた、思い出の手術記録のファイルを胸に退院。
小股でチョコマカ歩いている私に、斎藤Dr.が“活”を入れた。『普通に歩けるんだよ!』って。
おっかなびっくり、大股で歩く気持ちで足を出してみた。本当だ。普通の歩幅で歩けるじゃないの。すごいわ!


●ビキニで日光浴
一緒に入院していたN子さんとは、仲良しになって、今もe−mail交換をしている。近い将来、彼女はここに遊びにやってくる予定。ふたりが数カ月前に手術したなんて、地中海の太陽も風も波も、きっと気がつかないね。

先日、今年になって初めて、水着で海辺に体を横たえて日光浴したんだけど。何よりも嬉しいのはビキニの水着から傷が全然でないってこと。元気になれて本当に幸せ。ありがとうございました。

斎藤Dr.にはできる限り現役でいてほしいなあ。
でも、いつか引退ということになったら、国技館でも借切って、子宮を助けてもらった女性達を集めて、パーティーをしましょうよ。
そして、その後は、広島原爆の語りベとして、いつまでもお元気でいてほしいですね。


●方向音痴と花粉症の人は気を付けた方がいいかも・・・
これから手術を受けようとしている人で、方向音痴の人と花粉症の人はいますか?広尾M.C.は、“鶴見川橋”のすぐ近くにあります。川にはたくさん橋が架かっていて、違う橋を渡ってしまうと迷子になるかもしれません。

“鶴見橋”っていう似た名前の橋もあるから御用心!
入院前にクリニックから送られてくる諸々の説明にはちゃんと書いてあるんだけど、方向音痴の私は、術後検診の時にタクシーの運転手さん(地元の運転手さんではなかったし)に説明できなくて、迷ってしまいました。一度知っている所だから大丈夫と思って油断したせいです。

それから、術後しばらく、クシャミや咳きが傷にひびくので、花粉症の人は時期を選んだ方がいいと思います。
私は毎年ここで、ミモザによる花粉症になっています。もう、傷は全く痛まないので平気ですが、もし、手術の時期の選択を誤っていたら、と思うと、ゾッとします。
ヘックション! あっ、失礼しました。

同じ病気で悩み、苦しんでいる女性達が、1人でも多く広尾M.C.のドアをたたいて、明るく、幸せになってくれることを心から願っています。ごきげんよう。
術前(pre-ope)
のMRI
術後(post-ope)
のMRI
術前のMRI1 術後のMRI1


保存された子宮と摘出物
術後の保存子宮 筋腫
術後の保存子宮
(conservative Ut.)
筋腫
(myoma)
子宮内膜ポリープ 腺筋症
子宮内膜ポリープ
(evdometrial polype)
腺筋症
(adenomyosis)


術 前(pre ope) 術 後(post ope)
赤血球(RBC)413416
血色素(Hb)(g/dl)13.513.9
ヘマトクリット(Ht)39.239.4
備考
●前回血液検査:Hb 9
●摘出物:子宮筋腫          230g
          子宮内膜ポリープ    5g
          腺筋症             10g



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HIROO MEDICAL CLINIC