「良性腫瘍のはずなのに子宮ごと摘出されてしまう子宮筋腫。絶対納得できませんでした。」
レポートNo.72

叶静代(45才)
私は1999年3月に結婚しました。主人とは地元北海道の職場で知り合い、転勤族の主人の下へ、身の回りの荷物だけ持って嫁ぎました。「何が何でも子供が欲しい!」という夫婦ではありませんが、自然に授かったら出産したいとは考えていました。そこへ子宮筋腫が発見され、医師や身内から「子宮全摘」をほのめかされた事には絶対納得できず、子宮を保存して治療できる病院や医師をインターネットで探し、比較的短期間で「広尾メディカルクリニック」に辿り着き、手術を受けることができました。


●最初に異変を感じたのは・・
私の筋腫を最初に感知したのは、お医者様でも本人でもなく、エステティックのエステティシャンでした。1年くらい前にエステでマッサージを受けていたら、担当の方が「あれ?おなかにシコリがありますよ。」と言うのです。私は生理は至って順調。健康診断などの問診でも、婦人科系の症状には該当するものが一切ありません。ただ、当時はひどいベンピ症だったので、きっとそのせいだと思い、「あっ、そうですか?きっと今、ベンピしてるからだわ・・。」などと、会話を流していました。

その後スポーツジムに入会し、汗を流して健康管理だ!と意気込んで運動を始めたところ、うつ伏せになって背中をそらす「背筋運動」の時、うつ伏せになると下腹部に圧迫感を感じます。しかも月日が経つに連れ、圧迫するシコリがだんだんと大きくなっているようなのです。

「何か妙だ?」と自分の体に違和感を感じ始め、少し不安になり、筋腫の摘出手術を受けた友人にそれとなく尋ねてみました。友人からは「それは多分筋腫じゃないか。癒着していると大変だからすぐ病院に行くように」とのアドバイス。私は私で「子宮筋腫」についてインターネットでいろいろ調べ、多少なりとも知識を持って、診察に臨みました。


●摘出をほのめかす人たち・納得できない私
まずは近所のマタニティクリニックへ。エコーでの検査ですぐさま「子宮筋腫です。」と言われ、しかも既に赤ちゃんの頭ほどの大きさだというのです。しかもここまで大きいと、子宮を保存して筋腫だけ摘出するのは至難の業ではないか、と。次々と衝撃的な事実が目の前に突きつけられます。そこは小さなマタニティ専門のクリニックだったので、手術のできる大きい病院に行くよう、指示されました。

次に訪れたのは独協大学病院。ここは大学病院でもあるし近所で便利だったので。若くて感じの良い先生でした。内診とエコーの検査後、すぐさま「これだけ大きい筋腫だと全摘です。」と、言い渡されました。私の調べた限りでは、筋腫は腫瘍の中でも良性な腫瘍。子宮ごと摘出しなくてはならない理由が、私には考えられません。悪性の腫瘍があってもなるべく臓器は残そうという時代に、なんと時代遅れな治療しかできないのだろうか?全然納得できません。

医師の話では「子宮を残すような処置をしても、子宮の筋肉層にできている筋腫なので、子宮壁がほとんど残せない。子宮組織を殆ど取り除く事になるので、残す意味が無い。」子宮を残して筋腫だけ摘出して欲しい私の希望と、これだけ大きくなったらムリという医師側との意見が真っ向からぶつかりました。が、どちらにしても手術は免れないので、手術とMRIの予約をさせられました。私としては、全く不本意です。帰宅後、すぐに子宮を残して筋腫を治療できる病院を探し始めました。


●動脈塞栓術と開腹手術
子宮動脈塞栓術の井田病院と、開腹手術の広尾メディカルクリニックを発見し、とりあえず両方の診察を受けて、治療内容を比較検討しようと考えました。「広尾メディカルクリニック」は、メールでの質問も受け付けてくれていましたので、尋ねたい事を簡単にメールにつづり、送りました。2〜3日後、斎藤先生からのビックリするほど親切丁寧な回答を頂き、この段階で、開腹手術を受けるなら「広尾メディカルクリニック」しかない、と決めていました。

川崎市立井田病院での診察。大学病院で撮ったMRIと紹介状を持って診察を受けました。こちらでは、子宮動脈塞栓術で子宮を保存できる筋腫の治療を行っています。ところが、この治療は私のように大きな筋腫になると治療に1年以上かかる上に、筋腫が消滅するわけではないとのこと。

私の場合、筋腫を小さくして妊娠・出産が可能な子宮になるまでには時間がかかりすぎるため、45歳の私には不向きだと説明されました。高齢初産のリミットである47歳までに子供を産むためには、この治療では間に合わないので勧められない、35歳ならば絶対勧めるのに、と。この大きさだったら大学病院で手術した方が早いといわれ、大学病院で散々摘出を勧められた私は驚きましたが、紹介状には「子宮を保存して手術する」というような事が書かれてありました。

ですが、大学病院では開腹してみないと子宮を残せるかどうか分からないと言われており、「そんな博打は絶対にイヤ!」だと思っていましたし、開腹手術は「広尾メディカルクリニック」と決めていたので、井田病院の診察室を後にしました。この治療法はダメと分かった瞬間から爽やかな気持ちでやっぱり「広尾」だ!との思いで。せっかく川崎まで来たのだから「広尾メディカルクリニック」にも行ってみようと井田病院の公衆電話から「広尾」に電話をかけたのですが、道順が分からず、翌日の予約を入れ結局この日は帰りました。

次の日斎藤先生の診察を受けましたが、先生は「きれいに筋腫だけ取れる。子宮は綺麗に残せるよ大丈夫。」と、おっしゃいました。「何か質問は?」ともおっしゃいましたが、以前のメールで親切な回答を頂いた後だったのと、広尾のホームページはほとんど見ていたこともあって「何もありません。先生にお任せするだけです。」と答えましたら、先生は笑っていらっしゃいました。

その日は金曜日だったのでお茶会に招待され、術後検診にいらした方、入院されてる方のお話を聞くことができ、いろいろと勉強になりました。もちろん手術の予約も入れました。半年後の予約でした。それまで生理に関してはまったく普通だったのに、手術の2ヶ月前の2回に関しては大出血を起こしました。摘出される!と知った筋腫が、まるで最期の断末魔・悪あがきをしているよう。昼間から夜用ナプキンを使わないと間に合わないほどの出血。今までこれが起こらなかったのが不思議です。


●入院〜術後
2000年2月。手術。この日、私は3番目でした。この時、「自分の手術は比較的簡単だから、最後なのだろう。」と考えていましたが、患者さんたちの話によると、難しそうな人の方が後だそうです。確かに手術時間を比べると、前のお二人より1時間ほど長かった・・。

手術なんて初体験だし、色々見渡したり、先生に色々尋ねたりしようと考えていましたが、目を開けていたり喋ったりすると、体の水分がどんどん失われ、術後の喉の渇きがひどくなるから眠っているようにと言われたので、素直に従って眠りました。そして手術が終わって部屋に戻り、自分の摘出物を見たときに「わ〜、ホルモンみたい。ジューっと焼いて食べたらおいしいそう!」などと呑気な事を、朦朧としつつ主人に言いました。主人は気持ち悪そうに顔をそむけていましたが・・。

後日、先生からは「あなたの筋腫はたいへんだったんだよ。赤ちゃんの頭どころか特大メロン大の筋腫を骨盤の中から取り出したんだから」と言われました。癒着などは無かったようなのですが、MRIで見ると、確かに骨盤内の下の下まで、ガッチリ筋腫が詰め込まれているような感じです。このくらいの大きさだと、20年くらい前から筋腫の“芽”はあったはずだとも言われ、ビックリしました。

術後の体調は至って良く、入院中は、以前に読んだ体験談の方々のように過ごせていましたので、「私って(術後経過は)普通ですよね?」と看護婦さんに尋ねたら、大げさに首を横に振られ、「いえ、叶さんは特別元気です。」と言われました。それほど快適に、元気に入院生活を終え、退院を迎えました。当日は迎えに来てくれた主人と二人で電車を乗り継ぎ約2時間近く掛かる道のりを、しっかり自分の足で帰って来ました。

元気なはずの私の、唯一の問題点は、皮膚が人一倍弱く化膿しやすいので、術後3週間シャワーを浴びれなかった事。まだ肌寒い季節だったから良かったものの、真夏だったら耐えられなかったでしょう。主人が心配して、斎藤先生に診てもらうよう言うので、術後3週間は毎週「広尾」にうかがって、傷の消毒をしていただいていました。

3週目の診察で「シャワー、まだダメですか?」と聞いたら「なんだ、まだ入ってないのか。」と斎藤先生に言われた時は「ひっどーい、先週まで先生がダメって言うからガマンしてたのにぃ・・。」と笑ってしまいました。文章ではなかなか斎藤先生のお人柄をお伝えするのは難しいかもしれませんが、とにかく患者の事を第一に考えてくれる、ユーモアたっぷりの親切な先生です。

術後の検査では、いびつに大きく腹腔内を占拠していた子宮が、可愛らしく小さくなっていてすっかり普通。手術前に大出血した生理も28日周期で至って順調です。術直後は貧血だったヘモグロビン値も、術後検査では正常値になっていました。

私の場合、筋腫が無くなった事で体の様々な症状が軽減しました。まずは痔。以前は引っ込めてもすぐに元に戻っていたのが、いまは全然、顔も出しません。これには斎藤先生も驚かれていました。次は尿の出渋り感。一般的には頻尿になるようですが、私の場合は逆で、手術の3ヶ月ほど前から尿が出渋るようになっていました。出したくてたまらないのに、なかなか出て行かず、深呼吸したり姿勢を変えたりすると、口をすぼめたホースから細い水が出るような感じで、勢いはあっても細い尿をなが〜い時間をかけて出していました。それが今は普通に戻っています。

あとは相変わらずのベンピではあるのですが、以前は1日出ないとお腹が張って、腹部がはちきれるんじゃないかと思うくらい痛かったのが、今はそういうヘンな痛みは全くなくなりました。MRIを見ると手術前は筋腫の上に(お臍の上あたり)大腸がダンゴ状に乗っかっていた状態だったのです。ベンピと言っても、1日おきには排便があるので、今はあまり気にせず対応しています。


●子宮筋腫の治療について思う事
今回の治療で強く感じた事は、なぜ子宮は摘出されてしまうのか?という事でした。産む予定が無かったら取ってしまおうという発想は、一体どこから来るのでしょう。子供がいれば・産まないなら・要らないでしょ?という安直な考え。

女は子宮を体に備えて生まれて来るのだから、それを簡単に取り除こうという考えは間違っていると思います。人間の体には不必要な部分などひとつも無いはずです。摘出しないと死ぬ!という病気にかかってしまったなら別ですが、筋腫はガン化する可能性はとっても低い、良性の腫瘍のはず。患者が子宮を残す治療を望むのは、当たり前ではないでしょうか?

また、子宮を摘出すれば子宮ガンのリスクを回避できる、と説明する医師もいるようですが、それにも「?」と思わざるを得ません。子宮を摘出しても「子宮ガン」という名前のガンが無くなるだけで、ガンにかからないわけではないのです。ガンは体のあらゆる部分に発生します。では、そのリスクを回避するために体を無くす?そんな事は不可能です。

腕に出来た黒子状のもの、将来ガン化するかもしれないので腕を切り落としましょうとか、胃に出来たポリープ今は良性ですが予防の為胃は全部取っておきましょうとは言わないはずです。ガンの予防のためにも子宮を摘出しましょうというのは、医師の詭弁以外の何者でもないでしょう。

ただ、摘出手術を迫られ、オロオロしている患者の背中を押すための言葉だと思います。また全摘によるホルモンバランスの異常について訊ねると、子宮を取っても卵巣が残っているからホルモンバランスが崩れることもなく、更年期障害のような症状も殆ど出ませんよとのこと。でも以前女性のホルモンは生理を境にして入れ替わると聞きました。子宮が無くなって生理が来なくなったら何を境にホルモンの入れ替わりが起こるの?医師のそう言う答えに未だに疑問を持っています。

詭弁を弄する事無く、治療に対して真摯な姿勢を貫いている斎藤先生。斎藤先生の考え方や治療技術が後世に受け継がれる事を願ってやみません。将来の悩める女性のためにも・・。
術前(pre-ope)
のMRI
術後(post-ope)
のMRI
術前のMRI1 術後のMRI1

摘出物
摘出物

摘出物
摘出物

摘出物


術 前(pre ope) 術 後(post ope)
赤血球(RBC)432457
血色素(Hb)(g/dl)13.814.5
ヘマトクリット(Ht)40.244.2
CA-12522
備考
●あまり症状は無かった。   


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