斎藤先生はじめ病院の皆様
前略
先生、皆様いかがお過ごしですか?
私は一年前とはまるで別人の様に希望を持って生きています。東京医科歯科大学の先生による定期検診もその後異常はなく、とても安心してます。
本来ならもっと早くお礼を申し上げるべき所でしたが、末梢神経炎をわずらい、最近やっと普通に字が書ける様になり、風が冷たくなるに従い、1年前の事が昨日の事の様に思い出され、早くお便りをしなければと心のはやるまま筆をとりました。
今思えば、私は本当にラッキーでした。
この病院を知っているかいないかで一生が変るのですから。そして私のそばにこの病院の存在を知る人が居たことを考えると、これだけは神様に感謝せねばと思っています。
そして今、一年前とまるでちがう私が元気で、女性としての自信に満ちあふれて毎日を送っています。
この私がこの様に生きていれれるのは、斎藤先生に新しい命をいただいたからです。本当にそう思います。
新しいきらきらとした生まれたての命を先生は私に与えてくださいました。どんないにお礼を言ってもどんな言葉で表現してもこの気持ちは伝えきれないだろうと思います。
これ程尊い職業はないと言うのになぜ国、医学会が認めないのか、私にはまったく理解できません。
残念な事です。私の両親もまだ信じてはいない様です。本当に私の母の非礼を心からおわびいたします。ですが、何だかんだと言いながら、頭のかたいこの親が居なければ、あの手術は受けられなかったということも事実ではあります。
とにかく、私は自分の過去をふり返る事ができる余裕ができる程元気になったのです。広尾メディカルクリニックでいただいたのは、新しい命ばかりではありませんでした。その場に居たすべての人が私に優しさを教えてくださいました。
手術の日、その夜、何度も何度も鳴らしたナースコールにすぐ来てくださった白衣の天使さん。ただただ痛いと言う私の背中や腰を優しくさすってくれた手のぬくもりは一生忘れません。
本当にありがとうございました。本当にありがとうございました。
何度言っても言い足りません。言えば言う程しらじらしくなるかも知れませんが、言わずにはいられません。
先生、どうかこの仕事を一代で終わりにしないで下さい。21世紀に残してください。私がもらった命を、もっと多くの絶望の中に居る女性にも与えて下さい。 与え続けてください。
これから先、私が結婚して、赤ちゃんが産まれたら、この命も先生が与えてくださった事になるのですね。
何だかとても不思議です。先生が私にひとつの命を与えてくださり、その命がまたもうひとつの命を生み続ける。そう考えると至福とはこう言う事なのかなと思ってしまうのです。
先生、ナースの皆さん、事務長さん、本当にありがとうございました。
そしてお体を大切にしてください。
家が近いから、その内ひょっこりお菓子でも持ってみなさんに会いに行くかも知れません。皆さんの笑顔に又会えるのを楽しみにしています。
とりとめのない文章で恥ずかしいばかりですが、少しでも私の気持ちが伝わる様であれば幸いです。
どうぞ皆様、そして先生、お元気で、尚一層の御活躍をお祈りいたします。
かしこ
川崎 知加
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